7月23日(日)曇り ペコちゃん

 先週木曜日、親不知を抜歯した。半分埋没し、真横に生えた親不知。虫歯になったコイツを砕き割り、引っこ抜いて一針縫った後は、一週間後に抜糸を迎えるまで、半放心状態だった。。
 さて、この憎憎しい親不知を抜いてくれたのは、東京女子医大、口腔外科の男性医師。緊張してコチコチな私をリラックスさせようと、積極的に話しかけてくれた。「親不知の抜歯は、誰がやっても(担当医にかかわらず)後日傷みます。って別に僕が下手だから言い訳してる、とかじゃないですよー」。はっはっは、って先生、実は下手なの? 「でも、抜歯の最中は絶対に痛くしませんから。抜いた後、3、4日はペコちゃんになっちゃいますけどね。」。ペコちゃんって表現は可愛いけど、そんなのいやだ。やだやだやだ。
 「先生、そんなにビビらせないで下さいよ」と言うと、「まだまだ。今のはほんの序幕ですよ! へへ」。オチャメさは一級品だ。
 がしかし、驚いたことにこのオチャメ先生は、とても腕が良かった。また、抜歯中、度々現状を報告してくれるので、あとどれぐらいで終わるかが分かり安心した。面白い先生だから、“実況中継風でお願いします”って頼んでおけば良かったなあ、などと思いながら、無事抜歯終了。終わったあとも、「砕いたからバラバラだけど、これが今抜いた歯です。これをここにはめて、これがここで、パズルみたいに組み立てると一個になります。持って帰りますか?」と、ハキハキ。でも歯はいらないよ!
 オチャメ先生の宣告通り、3、4日間は確かにペコちゃんになった。がしかし、いくら“ペコちゃん”という表現が可愛くても、あんな風に舌ペロリン、まつ毛クルリン、目パッチリするわけにもいかず、やっぱりいやなのだ。さらに私が“ペコちゃん”に過敏反応を示す理由は、もう一つある。それは以前、“ペコちゃんに似ている”と言われたことがあるからだ。しかも、言われたのは特に抜歯後でなく、普通の日。
 私と、ラブリーでファンシーなペコちゃんとは雰囲気上、一致しない。ってことは、あの顔? でも私の顔は、どちらかと言えばちょっと怖いのだ。全然似てない。ってことは、まさか、あの顔の形?? ……骨格は変えられない。明るく生きよう!!

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7月11日(火)晴れときどき曇り ユイの背中

 昨夜、久々にユイ(マルチーズ)をシャンプーした。
 ぬるめのお湯を背中かからかけ、洗いやすいように毛を濡らしていく。そうすると、普段は毛に覆われて見えないユイの背中の皮膚が、よく見える。そこには、昔はちょっとしかなかったシミが、いくつも、いくつもあった。昔と比べて、色も濃くなっていた。
 痛くはないだろうが、その背中は何だか痛々しかった。撫でても消えないだろうが、少しの間、やさしく撫でた。
 見た目はこの家に来たときから変わらないけれど、ユイも年をとったんだなあと、しみじみ思った。いつの間に、こんなに背中にシミを作ったのさ、と、ちょっと悲しくなる。私が仕事ばかり、自分のことばかりしたり、考えている間に、ユイはどんな時間を過ごしてきたんだろう。
 と、考えても分からない。これからは、もっと一緒に時間を過ごそう。なにしろ私は“オレ様”な君が、大好きだからね。

7月5日(水)曇りのち雨 泣くことはないさ

 プー太郎生活5日目。たまに無職の後ろめたさから、自己嫌悪に陥りそうになるものの、まあ流れにまかせるか、と、ゆるゆる過ごしている。でも、自由過ぎる、膨大な時間に押し潰されそうになることもある。たいして生産的なこともせずに、時間を過ごしてごめんなさいと、誰かに謝りたくなる。
 こんな気持ちになるぐらいなら、ひとまず、一社ぐらいは派遣会社に登録するかと、早速先週登録を済ませた。
 派遣会社というのは色々あって、登録が面談のみで終わるところもあれば、事前に簡単な計算、一般常識、ビジネスマナーに関する問題を出したり、スキルチェックと称してワード、エクセル、パワーポイント等のテストを行うところもある。英語の資格を持っていると、そのレベルを再確認すべく、外国人スタッフによる電話インタビューをさせられることもある。そして、“派遣にはどんな働き方が求められるか?”といった、少々いまさら的な2時間強の研修参加が、必須なところもある。私が今回登録した会社がそうだ。

 研修に集まった30名は、一人を除いて皆女性。年齢は20代〜30代前半。
 モデル張りに美しい女性講師のリードで、研修はパキパキ進んでいく。「皆さん、ほうれんそうは御存知ですよね?」「求められるのは即戦力、柔軟性、協調性です」「第一印象は0.何秒〜15、6秒で決まります」「全てのマナーには理由があります」。そんな感じだ。面白くも、面白くなくもない。そして、休憩時間。
 「雨、止んだみたいですね」と、左隣に座っていた同年代の女性が話しかけてきた。「本当、良かった。傘を持って来てなかったんです」「私も」。少し天気の話をして、「派遣は初めてですか?」と聞いてみる。「はい」。「何で派遣を?」と、初対面であんたちょっと図々しいわよと思われかねない直球を投げてみる。
 「結婚して会社を辞めたんだけど、時間があり過ぎて……」「おーそうですか。確かに時間があり過ぎるとね」「というか、何もしてない自分がイヤで不安になる」「そうね、特に友達でバリバリ働いている子を見たりするとね」「周りはバリバリ働いてるか、子育てしてる。自分は何をしてるんだろうと思うと、夜涙が出てくるの」。えっっ、涙が……。その深刻さに少々驚くものの、「役割ができれば、気分もきっと楽になるよ。いい仕事と出会えるといいですね」と言う。本当に。
 右隣の女性(こちらは年上)も話に加わり、「何社ぐらいに登録すればいいと思う? 紹介がないと不安で仕方ない」と、私に聞いてくる。過去に正社員を二社、派遣を二社経験した渡り鳥の私は、「そうですねえ、私は昔、正社員と派遣の両方で、十何社か(人材紹介会社)に登録したことがありますよ」。すると左隣の女性が「えー、でも大変じゃなかった? 最初のうちは毎日電話くるでしょう?」「確かに、コントロールするのが大変でした。名刺なんてね、並べたら一畳分ぐらい。いや、半分ぐらいかな」。「はははは」と、夜涙すると言う彼女が笑う。「ごめんなさい、笑っちゃった」「いいのいいの、もう笑い話だから」。そう、そのときは辛かったけど、もう笑い話になった。結局、登録は3社〜5社程度でいいと思いますよと右隣の女性に伝えたところで、休憩は終わり。
 夜、涙はしないけど、彼女の気持ちは分かる。人は、役割があった方が、生きやすい。その方が、生活にリズムがつき、メリハリがつく。誰かの役に立っていると思えることが、自尊心を高める。限られた休日が輝く。
 会社を辞めても、やっぱり悩みはつきない。それでも、泣くことはないさ。今は辛くとも、いずれは、笑い話になるといいね。






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